意識していない強い筋肉収縮が突然発生し、つって痛みを伴う症状を俗に「こむら返り」と言い、医学用語では「有痛性筋痙攣(けいれん)」や「筋クランプ」とも表現されます。
一般健康人でも激しい運動や長時間の立ち仕事の後には下肢を中心に起こることがありますが、50歳以上ではほぼ全員が一度は夜間のこむら返りを経験しており、60歳以上の6%が毎晩こむら返りに襲われているという報告もあります。
一般に、筋肉の細胞はカルシウム、マグネシクム、ナトリウム、カリウム、水素の各イオンのバランスによって反応のしやすさが決まるのですが、健康な人ならば過剰なイオンは尿や汗などから排出され、反応性がちょうどいい範囲内におさまるよう調節されています。
ところが、睡眠時は汗を多くかいており脱水傾向にあります。
さらに全身をほとんど動かさないため、心拍数も減り、血行は低下しています。
夏場に冷房をつけっぱなしで寝たり布団をかけずに寝ると、足の筋肉が冷え血管も収縮し、血行はさらに悪くなります。
こういった悪い状況でイオンのバランスが崩れているときに、たまたま寝返りをうって筋肉に刺激が加わると、筋肉の細胞が暴走して過剰な収縮が発生しやすくなってしまうのです。
<中年になるとリスクが高まる?>
ではなぜ中年以降で起こりやすくなってしまうのでしょうか。
その理由として、若いときより運動量が減っているため、筋肉量が減少している⇒筋肉内の血行が低下する⇒乳酸などの疲労物質が排出しづらい⇒末梢神経の興奮を抑えにくくなる⇒筋肉の細胞が暴走しやすい、ということが考えられています。
悲しいかな、年をとるとたいした運動をしていなくても筋肉に疲労が生じ、睡眠中に足がつるリスクが高まってしまいます。
他にも例えば妊婦は、過呼吸によって血液がアルカリ性に傾いていたり、子宮が下大静脈を圧迫して循環が悪くなっていたり、足が常に疲労していることからこむら返りを起こしやすいことが知られています。